第1話「英語は何の話かを先に決める言語である」|これから文法以前の英語の話をしよう

これから文法以前の英語の話をしよう

英語が苦手だと感じている人と話すと、いくつかの共通点があります。

・単語はわかるのに文になったら英語が理解できない

・単語ばかり覚えても結局文が作れない

・文法が合ってるか不安だから話せない

英語を学習する上で、ほとんどの方がこのような悩みを経験します。私も「間違いを恐れて英語を使えない」時期があったのでよくわかります。英語学習は難易度が高いため、永遠に英語を話すことができないような気がします。

しかし、実はこれは大きな勘違いです。

英語が難しく感じる原因は、文法の知識不足ではないことほとんどです。文法知識以前に、英語と日本語では文を組み立てるときに「最初に考えるべきこと」が異なるという超重要なポイントが見落とされているのです。

この大前提を知らないままだと前述のように、どんなに頑張って学習を続けても自分で成果を感じられないという負のスパイラルに陥りかねません。今回は文法以前に大事な話として、「英語何の話かを先に決める言語である」ということをお伝えします。

日本語は「状況」から始まる言語

まず、日本語から考えてみましょう。例えばこんな発言があります。

「昨日、雨だったじゃん。びしょ濡れになったんだよね」

この文には主語はありません。しかし、日本語話者であれば問題なく意味は通じます。

なぜかというと、日本語は「話題」「状況」「空気」を共有する言語だからです。ひと昔前の言葉を用いれば「空気を読む」言語ということです。

直接的に、はっきりと述べなくても「誰の話か」「いつの話か」「どんな状況か」が伝わります。というよりも、聞き手と話し手で内容を共有しながら話す言語です。話し手は「察してね」、聞き手は「察するね」と。

日本語はまず「どういう状況か」という場面から話を始めます。その上で「何が起こったのか」を説明する言語です。

私たち日本語話者は自然とこのスタイルを習得しているため、「言わなくてもわかるだろう」という前提を持っています。しかしこれは諸外国語では当たり前のことではありません。この前提が英語学習の足を引っ張っているということが意外と知られていない事実なのです。

英語は「何の話か」を最初に固定する言語

一方で英語はどうでしょうか。先ほどの日本語文を英語にしてみると、

"It was raining yesterday. I got soaked."
「昨日雨が降っていた。びしょ濡れになった」

英語ではほぼ必ずと言っていいほど、「主語+動詞」の形から文が始まります。英語は日本語と違い、相手に状況を察してもらう言語ではありません。基本的に伝えるべき情報は全てはっきりと伝えます。曖昧さを嫌う言語と呼んでいいかもしれません。

英語を使う際はこの前提を押さえておかなければなりません。

例えば、英語では”Rained.”「雨だった」という状況だけでは不十分で、主語(この場合はIt)を立ててから話を進めます。

英語は「これは何についての話ですか?」という問いに、主語を用いることで文の最初に答える言語です。日本語のように「話を聞けばわかるよ」という考えではありません。

英語は「今から〇〇についての話をしますね」というメッセージを、主語を設定することによって相手に伝える言語。だから英語では主語が大事だと言われるわけです。

「主語が必要」なのではない

ここでよくある説明として、「英語は主語が必要な言語です」というものがあります。英語を学習したことのある方であれば、一度は見聞きしたことがあるでしょう。

正確にはこれは半分正しく、半分間違いです。実際のところ、主語のない英文というのも中には存在します。しかしながらこの場合は「主語を述べなくても、何の話かわかる」状況に限られます。日本語と違い、英語でこの状況は稀です。

繰り返しになりますが、英語で主語を立てる本質は次のようになります。

英語は「何を話題にするか」を最初に決める言語。

主語は「今から〇〇の話をしますよ」という宣言の役割を持っています。だからこそ、主語は必要だと言われているのです。

日本語→英語で詰まる理由

日本語から英語を作るとき、学習者の方の多くは次のプロセスをたどります。

①日本語の文を単語に分解する

②該当する英単語に置き換える

③語順を入れ替える

このプロセスでは今回解説している、日本語と英語の前提を踏まえていない英文ができてしまいます。日本語に忠実な英文を作っている方こそ陥ってしまう罠と呼んでもいいかもしれませんね。

日本語はそもそも「何の話か」をはっきり言っていないことがほとんどです。日本語話者は特に意識せずに話題を察していますが、英語に翻訳すると引っかかります。

「何の話?」「誰の話?」「主語がないんだけど」

このような混乱を招いてしまうわけです。

例えば先ほどの文を用いてこのプロセスを再現すると

「昨日雨が降っていた。びしょ濡れになった」
①昨日/ 雨が/ 降っていた。/ びしょ濡れに/ なった

②yesterday/ rain/ rained / soaked / became

③Rain rained yesterday. Became soaked.

正直この文はかなり間違いを含んだ英文です。これは文法ミスというよりも、それよりももっと前段階の間違いです。

この文を英語に翻訳するなら

“It was raining yesterday. I got soaked.”が適切でしょう。

このように、真面目に英語に取り組む人ほどこの罠に陥ってしまいます。原因は一つ。先に述べたように「日本語と英語はそもそも言語的前提が違う」ことを無視してしまっているからです。

しかし安心してください。このシリーズでは学校英語や英会話では流されがちなこの前提を丁寧に解説していきます。文法よりも大事な話として。

英語は「決めてから話す」

英語を使うとき、最初にやるべきことは一つです。

これは、誰(何)の話なのかを決める。

そのあとで、

  • 何をしたか
  • どうだったか
  • いつ・どこでか

を付け足していきます。

ひろきが車を買った。
→Hiroki bought a car.

ひろきが昨日車を買った。
→Hiroki bought a car yesterday.

ひろきが昨日、東京で車を買った。
→Hiroki bought a car in Tokyo yesterday.

このように「主語」を決めたら、あとは情報を後ろに付け足していきます。

英語は、「決める → 説明する」という順番で作られる言語です。日本語のように「察する」という文化はありません。

文法の前に、視点を変える

ここまで読んでいただいてありがとうございます。今回、文法用語をほとんど使っていないことにお気づきでしょうか。

英語がわからない原因は文法の知識が足りていないからではなく、単語を知らないからでもありません。ましてや学習者の能力の問題ではありません。

その原因は、文法以前に英語の大前提を知らないから。

その前提を一つずつ、丁寧にお伝えしていきます。英語学習に悩むみなさんの「文法以前の英語への考え方」を正しい方に書き換えていきます。

まとめ

今回は日本語と英語の情報共有の違いについてお話ししました。文法を始める前に知ってほしい内容ですね。

①日本語は「状況・空気」を共有している
 →言わなくても伝わる(察する)言語

②英語は「何の話か」を最初に決める
 →言わないと伝わらない言語

③文法よりも言語の違いが重要!

執筆者
井上惠隆

福岡出身、平成生まれ。西南学院大学大学院文学研究科修了。元高校英語教諭。現科目としての英語ではなく、あなたの言語になる英語を教えたいので教員をリタイアし、翻訳家をしながらAlice Lidell English(アリス・リデル・イングリッシュ)を立ち上げて英語講師をしています。言語学習は音読が全てだと思っています。

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