AIミステリー『AIアテナの犯罪捜査』をレビュー!捜査人工知能VS犯罪人工知能の戦いを見逃すな!

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『このミス』大賞の隠し玉作家が贈るAIミステリー

今回紹介する『AIアテナの犯罪捜査 警察庁情報通信企画課<アテナプロジェクト>』は2021年11月に発売された書き下ろし作品です。

著者の越尾圭さんは第17回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉としてデビューしました。

ミステリー小説の実力派新人作家が贈るAIミステリー小説ですので、面白くないわけがない!期待に胸が膨らみますね!

内容紹介

『AIアテナの犯罪捜査』のあらすじを私なりにまとめました。

十勝鉄郎は新宿中央公園で起きたドローン爆発事件に出くわした。

現場から見つかった金属カプセルの中には警察庁が開発を進めるAI「アテナ」への宣戦布告とも取れる犯行声明が入っていた。十勝はアテナプロジェクトのリーダーである穂積とタッグを組む。

アテナを駆使して操作を進める二人を嘲笑うかのように犯人は次々と爆破事件を成功させていく。

勝つのは正義のAIか、それとも悪のAIか・・・・・

ココがすごい!

私が個人的に『AIアテナの犯罪捜査』を読んでスゴいと思ったところを紹介します!読む時の参考にしてください。

AIミステリーの誕生を描く

まず本作はAIミステリーです。SFではありません。警察側がAIを駆使して操作を進める反面、犯人側もAIを駆使して爆破事件を起こしていきます。

例えば警察はAIアテナを用いて犯人の特定を試みます。また、たくさんあるデータの中から次の被害者に選ばれそうな人物を特定したりします。AIを活用することで、捜査の効率が上がるわけです。

しかし犯人側もAIを駆使します。AIを駆使して殺人プログラムのようなものを作り上げてしまいます。犯人側のAIを止めるために、警察もAIアテナに情報をどんどん読み込ませるのですが・・・・・。

と、いう感じで本作はAIを用いたミステリー作品です。

警察側のAIと犯人のAIの対立を軸に話が作られています。人工知能が中心となる話ですが、もちろん人間の葛藤や内情もあります。というか、その部分が大事です。

特に、穂積孝介の葛藤のシーンは感情移入間違いなし!

正義と悪の対立を描く

本作は正義対悪の構図がしっかりしています。

アテナを開発した穂積孝介と、AI犯罪を企む人物は、実はどちらもある事件の被害者です。どちらも伊勢村という殺人犯によって両親を殺されてしまいます。しかし、伊勢村は精神鑑定の結果、不起訴処分になってしまいます。

伊勢村が不起訴処分を受けた後から、二人の対立は始まります。穂積孝介はパソコンを使って警察の操作を進化させ、犯罪を減らして自分と同じように悲劇に見舞われる人を減らしたいと強く誓います。

対してもう一人の人物はパソコンを駆使して伊勢村を殺すことを誓います。伊勢村を殺した後に警察を振り切り、警察の無能ぶりを世に知らしめることを目標とします。

ここまででなんとなくお分かりかと思いますが、伊勢村に両親を殺された人物のうち、後者が爆破事件の犯人です。伊勢村という一人の人物がトリガーとなり、正義の道に進んだ穂積と悪の道に進んだもう一人の人物が対立します。この犯人が誰なのか、目が離せないんです!

一つの悲劇を引き金に、全く違う人生を歩む二人。それぞれの葛藤、悩み、苦しみという心理状況が描かれる。読み進めるうちに明確になってくる対立構造。

最初は正義の立場に立って読んでいた人も、後半に差し掛かるにあたって「犯人の気持ちも理解できる」という感覚を抱くことでしょう。皆さんもぜひ、本書を読んで正義と悪のはざまで揺れてください!

全ては人間の仕業か

今作は捜査人工知能vs犯罪人工知能の対立が主な構図です。しかし、私はここでふと気付きました。「人工知能は善でも悪でもない」ということです。

作中に出てくる犯罪人工知能は「爆弾をつけたドローンがターゲットに向かって飛んでいく」など色々出てきます。読んでる時って、どうしても犯罪人工知能を悪者と考えてしまいがちなんですよね。

ですが、決して人工知能が「人を殺したい」と思って行動しているわけではなく、あくまでも人間が人工知能に「人を殺す」ようにプログラミングしているわけです。人工知能はただ命令に従っているだけなんですよね。

捜査人工知能アテナの場合も同様に、アテナは「犯人を探したい」と思ってデータを分析するのではなく「命令に従って」分析しているだけなんですよね。人工知能自体に善とか悪とかの考えはないわけで、結局人間の存在が裏にあるわけです。

アテナを駆使する穂積(正義)と犯罪人工知能を駆使する犯人(悪)のハイレベルな争いを是非とも読んでほしいと思います。

読後感

この本を読んだ感想としては「シリーズ化してほしい」というのが率直な感想です。それくらい楽しく読ませてもらいました。シリーズ化は難しくても、越尾さんにはAIミステリーをたくさん書いて欲しいな、と思います笑

個人的に伏線の回収とミスリードが好きでした。特に犯人なんですがおそらく読む方は騙されるかな、と。先ほども書きましたけど、犯人って大体は想像つくんですよ。だって冒頭で「伊勢村を殺してやる」って書いてあるんですもん。想像はつくけど誰だかわからないんです。

なぜかって?ミスリードにまんまとハマるからです笑。最終的には「あー、こいつだったか」となりますが、読書中は犯人探しに躍起になってました。悔しくて笑。

AI×ミステリーという新しいジャンルを確立した本作ですが、捜査人工知能vs犯罪人工知能という構図がそもそも面白いです。これまでのミステリーにはない感じで新鮮でした。

特に、これまでは探偵が聞き込みをして引き出していた情報をAIがさらっとやってしまうのは少しクスッときましたね。

肝心のミステリーの部分もしっかりと練られています。最後、犯人が伊勢村を憎んでからどのように過ごしていたかの描写があるんですが、そこは正直急展開すぎて置いて行かれた感がありました。が、そこも話としては面白いのでありです!

AIミステリーとはいえど、全ての出来事の裏には人間の悪意が関わっているということを思い知らされました。結局人間が一番こええよ笑

執筆者
井上惠隆

Alice Lidell(アリス・リデル)という個人占い屋を経営しています。鑑定歴は10年以上。タロットや手相、風水など様々な占術を合わせたオリジナルの鑑定が人気です☆日中は会社員として九州の片田舎で妻と柴犬と暮らす日々。実用×スピリチュアルで「善く生きる」ための情報を探求中。シンプルな暮らしに憧れています。

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